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目次
- 電荷を除いた空間を変数分離可能な座標に沿って分割する。
- 分割された部分空間内で、電位をラプラスの方程式の解で
展開する。(展開係数[未知]含む)
- 分割された空間の境界面上での境界条件より展開係数を決定する。
[例1] 導体球と点電荷
座標の原点を中心とする半径
の導体球の近傍
に点電荷
が置かれている場合の電位分布を求める。
ただし、空間の誘電率は一定で
とする。
球座標系でのラプラスの方程式の解を用いて
電位を展開することとし、
領域を
領域I |
 |
領域II |
 |
の2つに分けると、各領域内には電荷が存在しないので、
電位(ポテンシャル)はラプラスの方程式を満足する。
界は
軸に関して回転対称
)であることを考慮して、
電位をラプラスの方程式の解で展開する。
[付録の式(A.5)参照]
界は、
方向に対称であるから式(A.5)において
とすることができる。
このとき、Legendre陪関数はLegendre関数となる。
で電位は発散しないことから第2種Legendre関数の
係数は
となる。
よって、電位は次のように展開される:
![\begin{displaymath}
\mbox{\large$\phi$}(r,\theta)=\left\{
\begin{array}{ll}
\...
...+ D_n r^{-(n+1)}]
P_n(\cos\theta)}& (r>b)
\end{array}\right.
\end{displaymath}](img22.png) |
(1.1) |
上式は未知の展開係数
を含んでいる。
これらの係数は
での電位の境界条件、
および、
での電界の境界条件より決定される。
電界の
成分は
と表される。
(i)
での境界条件
(導体球表面)
より、
が得られる。
であることを考慮して、上式を変形すると、
となり、この式が
の値に依らず成立するには、
である必要がある。
(ii)
での境界条件
より、
 |
(1.4) |
を得る。
式(1.2)-(1.4)より、
であるから、
式(1.1)は、
 |
(1.5) |
と書き換えることができる。
また、このとき電界の
成分は、
より、
 |
(1.6) |
と表される。
(iii-a)
での電位の連続条件
においてポテンシャルは連続であることから、
が成立するので、式(1.5)より、
を得る。
この式を書き換えると、
 |
|
|
(1.7) |
と表すことができる、
ここで、
はクロネッカの
を意味する:
(iii-b)
でのガウスの定理
電束の不連続分が電荷
と等しいことから、
でGaussの定理を適用すれば、
が成立する。
ここで、
は半径
の球面上での電荷密度であり、
と表される。
ここで、
は
での微小な面要素である。
上式へ、式(1.6)を代入し、
で積分する。
さらに、
の極限として、
をDiracの
関数
で置き換えて整理すると、
を得る。
上式の両辺に
をかけて
で積分し、整理する。
このとき、Legendre関数の直交性(式(A.6))を利用する。
を
で置き換え、
を利用すると、
を得る。
式(1.7),(1.8)を連立方程式として
,
を
決定することができる。
その結果は、
この式を式(1.5)に代入すれば、
 |
(1.11) |
を得る。
更に、式(1.6)より、
であり、導体球上の蓄積電荷は、
と表される。
導体球上の全蓄積電荷が
の場合には、
上式で
と置いて、
を求めると、
となる。
したがって、電位分布は、
と表される。
ただし、
である。
[例2]
2枚の平行導体平板と線電荷
と
に並行に置かれた2枚の導体平板の間に、
軸と並行に線電荷
[C/m]が
に置かれている
場合の電位分布を求める。
ただし、2枚の導体板の電位はともに
[v]とする。
(
)
解法1
(
)座標系[Cartisian coordinate system]
のラプラスの方程式の解を用いて電位を表現する。
領域を
- 領域I(
)
- 領域II(
)
の2つに分け、
での境界条件、
での境界条件
、および、
での電位の連続条件を考慮すると、
 |
(1.12) |
と表すことができる。
このとき、電界は
と表される。
での電界の不連続が線電荷に起因して生じることから、
なる関係が成立する。(ガウスの定理)
と表されるので、
式(1.12)を上の関係式に代入して整理すると、
となる。
この式の両辺に
をかけて[
]で積分する。
このとき、三角関数の直交性[付録の式(A.13)]
を考慮すると次式を得る。
これを整理して、
したがって、電位は式(1.12)より、
と表される。
解法2
線電荷を含む面を境界として領域を
- 領域I(
)
- 領域II(
)
の2つに分け、
ラプラスの方程式、
、および、
での境界条件、
での電位の連続条件を考慮して、
電位を、
 |
(1.14) |
と表す。
ここで、
は未知関数である。
このとき、
での電界と電荷の関係より、
が成立するので、
が得られる。
上式をフーリエ変換して整理すると、
が求まる。
この式を式(1.14)に代入して、
が得られる。
ただし、
を表す。
解の変形(i)
の場合
上で得られた、式(1.13)と式(1.15)が等しいことを示す。
において、
となるので、
のとき、
式(1.15)の積分を複素積分に拡張して、
積分路を上半平面で閉じることができる。
このとき、積分の値は複素
平面の上半平面(
)の
留数の和となる。
より、
に被積分関数の
での1位の極が存在するので、
留数定理により、
と変形される。
この結果は式(1.13)と一致している。
の場合も同様に、複素積分に拡張し、
の下半平面で積分路を閉じて、
留数の和に変形することができる。
解の変形(ii)
式(1.15)を変形し、ポテンシャル分布の物理的な解釈を行なう目的で
鏡象によるポテンシャルの表現式を導出する。
式(1.15)は、
と書き換えることができる。
ここで、
と表されるから、積分公式
を利用して[II(iv)p.278]1.1、
とも表すことができる。
この結果は、導体板により生じる鏡象による表現式となっている。
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T.Kinoshita
平成15年6月18日