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モーメント法

区間Dで定義された関数方程式
\begin{displaymath}
L\{f\} = g
\end{displaymath} (4.1)

のモーメント法による近似解法を説明する。 簡単のため区間Dは1次元であり、$0\le x \le 1$とする。 ただし、 $f(x)$はこれから決定すべき未知関数であり、 境界条件$f(0)=f(1)=0$を満足するとし、 $g(x)$は既知関数、$L$は微分・積分演算などを含む適当な線形演算子とする。

散乱回折現象の解析やアンテナの解析では、通常、 $f(x)$が散乱体、あるいは、アンテナ上の電流分布に対応し、 $g(x)$は入射界、あるいは、励振界に対応する。

まづ、$f(x)$を境界条件を満足する既知の関数列{$f_n(x)$}で

\begin{displaymath}
f(x) = \sum_{n=1}^{N}\alpha_n f_n(x)
\end{displaymath} (4.2)

と展開する。 ここで、$\alpha_n$はこれから決定すべき未知定数(展開係数)である。 このとき、式(4.1)は
\begin{displaymath}
\sum_{n=1}^N \alpha_n L\{f_n(x)\} = g(x)
\end{displaymath} (4.3)

と表される。

次に、区間Dで定義された関数に対して内積を定義し、 上式の両辺と適切な重み関数{$w_m(x)$}との内積 [付録参照] を求める:

$\displaystyle \sum_{n=1}^N \alpha_n \langle w_m(x),L\{f_n(x)\}\rangle$ $\textstyle =$ $\displaystyle \langle w_m(x),g(x)\rangle
,\quad(m=1,2,3,\cdots,N)$ (4.4)
$\displaystyle \left[\langle w_m(x),L\{f_n(x)\}\rangle\right]
\left[\alpha_n\right]$ $\textstyle =$ $\displaystyle \left[\langle w_m(x),g(x)\rangle\right]$ (4.5)

上の方程式は展開係数{$\alpha_n$}についての代数方程式であるので、 連立方程式として解けば 展開係数{$\alpha_n$}が求まる:
\begin{displaymath}
\left[\alpha_n\right]
=
\left[\langle w_m(x),L\{f_n(x)\}\rangle\right]^{-1}
\left[\langle w_m(x),g(x)\rangle\right]
\end{displaymath} (4.6)

内積には、

\begin{displaymath}
\langle w(x),f(x)\rangle
= \int_0^1 {w(x)}f(x)h(x) dx
\end{displaymath}

のような積分が用いられる。 また、$h(x)$$0\le x \le 1$で非負の適当な実関数である。

$f_n(x)$が完備な関数列であれば厳密解が得られるが、 数値計算に置いては展開関数を有限個($N$)で打ち切るので、 通常は、 このモーメント法では近似解が得られる。

モーメント法では、 打ち切り項数($N$)に対する収束の速さ、および、精度は展開関数の選び方に 大きく依存する。



T.Kinoshita 平成15年6月18日