知能化技術の応用
高齢者の見守り支援,店舗案内,リハビリ支援など,さまざまな分野に対する知能化技術を応用するための諸問題の定義や解決方法について議論しています.
健康づくり支援のための体操ロボットシステム
研究内容
本研究では,高齢者の身体機能や体操へのモチベーションに合わせて,インストラクション・評価が可能な体操支援ロボットを開発しています.客観的な指標である体操の点数をロボットパートナーが高齢者に伝えることで,「自身が健康である」という認識となる主観的健康感を向上させることを期待しています.
実証実験では,「体操への参加促し」と「評価,褒め言葉」の有無によって体操に関する動機づけがどのように変化するかを評価してきました.実験結果より,「体操への参加促し」と「評価,褒め言葉」の両方を導入した場合,主観的健康感が最も高くなることや,「体操への参加促し」より,「評価,褒め言葉」の方が効果的であることなどが確認できました.また,人が信頼を獲得するための自己呈示の戦術としてしばしば活用される「自己奉仕バイアス」に基づくコミュニケーションモデルを導入することで,たとえ体操の評価が良くなかったとしても,失敗をロボットの責任に帰属させやすくなることで,自信や自尊心へのマイナスにはならないことが示されました.
キーワード
動機づけ,自己効力感,認知バイアス,行動変容,体操ロボット,高齢者支援
出典
- Takenori Obo, Human-Robot Communication Based on Self-Serving Bias for Daily Exercise Support, International Journal of Artificial Life Research, Vol. 7, Issue 1, pp. 24-37, 2017.
- Takenori Obo, Chiaki Kasuya, Siqi Sun, and Naoyuki Kubota, Human-Robot Interaction Based on Cognitive Bias to Increase Motivation for Daily Exercise, In Proceedings of the 2017 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics (SMC2017), Banff, Canada, October 5-8, 2017.
- Atif Ahmed, Chu Kiong Loo, and Takenori Obo, Neuro-Fuzzy Model with Subtractive Clustering Optimization for Arm Gesture Recognition by Angular Representation of Kinect Data, In Proceedings of the 6th International Conference on Informatics, Electronics & Vision (ICIEV 2017), Himeji, Japan, September 1-3, 2017.
複数台のロボットによる店舗案内システム
研究内容
本研究では,無意識的に利用者を引き込んでいくような没入感を高めるマルチロボットコミュニケーションシステムを構築することを目指しています.複数のエージェントによって実現される案内は,相手の移動に付き添う形で案内を提供することで,情報提供を行うだけではなく,タスクを共有する仲間として信頼関係を構築できることも期待できます.
具体的には,来店客の目的とする商品情報を入力として,来店客に最寄りのロボットが,来店客とその商品との位置関係から,商品の陳列棚の方向を誘導するように案内を行います.さらに,誘導した方向に設置された他のロボットが,来店客の移動に合わせて,誘導灯のように呼びかけを行っていきます.
実証実験では,複数のロボットがショッピングの店舗に導入された場合における案内役としての効果検証やロボットの印象評価を実施しました.実証実験の結果,「誘導灯のような呼びかけ」を導入したの方が,顧客に対して案内の理解度を高めることが確認できました.ロボットに対する主観的評価では,「優しさ」,「信頼感」,「ロボット案内の必要性」が,提案手法で向上することが示されました.
キーワード
案内ロボット,マルチロボットコミュニケーション,協調
出典
- ロボット店員がお出迎え 東京工芸大が実証実験,タウンニュース(厚木版),2020年2月7日号
- 接客ロボット 握手で常連認識,読売新聞 朝刊,2020年1月16日号
- 杉本昇大, 大保 武慶, 久保田直行, 店舗案内のための没入感を高めるマルチロボットコミュニケーション, ロボティクス・メカトロニクス講演会2019 (ROBOMEC2019), 講演論文集, 1A1-C01, 広島, 2019.
- 厚木で接客ロボット実証実験 東京工芸大が開発,産経新聞,2019年2月16日
- 接客ロボがお目見え,タウンニュース(厚木版),2019年1月25日号
- 東京工芸大,神奈川・厚木で接客ロボ実証,日刊工業新聞,2019年1月24日
半側空間無視患者のためのリハビリ支援システム
研究内容
半側空間無視は,右大脳半球の損傷後に40~48%の頻度で認められており,大脳半球病巣と反対側(左側)の刺激に対する認知的処理が障害される疾病です.半側空間無視患者を対象としたリハビリテーションや治療では,患者が,認知,行為の障害,注意の障害を合併している場合が多く,無視を発症させる要因を特定することが難しいとされています.
本研究では,姿勢計測情報や視線計測情報など,異なるモダリティの計測情報を融合するマルチモーダルセンシングシステムを構築し,時系列データから患者の状態やリハビリの進度を定量的に評価するための方法論を確立することを目指しています.具体的には,頭頸部,体幹姿勢,視線の計測情報から患者の動態に関する特徴抽出を行い,患者の注意領域を予測するための方法を提案しています.
患者の無視領域の評価・特定を行うため,12インチのタブレットPCを適用した評価アプリケーションを開発しました.本システムでは,被験者に画面上を出現するターゲットを認識,タッチしてもらうことで,視認可能領域,反応速度などを計測します.ターゲットは画面上の左右いずれかの方向からランダムに出現します(出現回数は左右同じ).ターゲットは5秒が経過すると消失するため,被験者には時間内にターゲットをタッチすることが求められます.
実証実験の一例として,比較的軽度の半側空間無視患者にシステムを利用して結果,システムの利用を重ねていくにつれて,被験者の頭部姿勢が無視側に偏っていき,その姿勢が基準姿勢になっていくことが確認されました.今後,システムの仕様を検討しながら,被験数を増やし,患者の動態モデリングを行っていく予定となっています.
キーワード
状態推定,生体情報計測,空気圧センサ,組込みシステム
出典
- Takenori Obo, and Kota Adachi, Multi-modal Sensing System for
Unilateral Spatial Neglect in Computational System Rehabilitation, In
Proceedings of the 2018 IEEE International Conference on Systems, Man,
and Cybernetics (SMC2018), Miyazaki, Japan, October 7-10, 2018.
- 大保武慶, マルチモーダルセンシングによる半側空間無視評価のための計算論的アプローチ, LIFE2018, 講演論文集, pp. 103-106, 東京, September 6 - 8, 2018.
- 松田雅弘, 万治淳史, 久保田直行, 大保武慶, 殿村隆太, 二瓶篤史, 新田收, 楠本泰士, 第55回日本リハビリテーション医学会学術集会, 講演論文集, 福岡, June 28 - July 1, 2018.
- 殿村隆太, 大保武慶, 松田雅弘, 久保田直行, 万治淳史, 自動車運転における注意機能の評価支援システム, 第54回日本交通科学学会学術講演会, 東京, June 28 - 29, 2018.
- 殿村隆太, 大保武慶, 久保田直行, ロボットパートナーを利用した注意誘導に基づく無視領域の推定, 第61回システム制御情報学会研究発表講演会 (SCI2017), 講演論文集, 京都, May 23-25, 2017.
- 殿村隆太, 久保田直行, 大保武慶, 半側空間無視患者のための知覚-運動評価システムの構築, 関東支部第23期総会・講演会, 講演論文集, OS1101-05, 東京, March, 16-17, 2017.
学習環境における色彩効果の検証
研究内容
本研究では,学習者に極力負担がかからないように,空気圧マットレスセンサが挿入されたクッションを用いることで,座位姿勢から無意識的に状態推定が可能な計測システムの構築を目指しています.さらに,問題解決時において色彩が学習者に与える影響を検証するため,背景色が異なる言語・非言語問題を作成し,問題解決時における心拍変動解析から,学習者の状態変化について議論を行います.
予備実験では,色彩効果を検証するために問題の背景色を赤色,青色,黄色,白色の4種類で比較検証を行いました.また,動画視聴後には,アンケート調査を実施し,各問題の解答時にどれだけ悩んだかを5段階評価で回答してもらい,さらに,インタビュー調査として,「考えても解けなかった問題」,逆に「制限時間を30秒以上残して解けた問題」についても確認しました.
実験結果より,どの背景色にも関わらず,被験者が問題に対して難しさを感じている場合においてはLF/HF値が上昇し,難しさをあまり感じていない場合においては,LF/HF値が比較的低く推移することが確認できました.また,背景色の違いについては,赤色の場合にLF/HF値が大きくなる傾向が確認されましたが,LF/HF値には,個人差や各被験者の問題に対する印象の違いの影響も無視できないため,今後,被験者数を増やし,色彩特有の効果を検証することを課題としています.
キーワード
色彩効果,心拍変動解析,学習支援システム
出典
- 長谷良夜, 大保武慶, 色彩効果を用いた教育支援のための生徒の状態推定, 第36回ファジィシステムシンポジウム(FSS2020),講演論文集, WEB, Septmber 7-9, 2020.
- Ryoya Hase, Toshiyuki Sawayama , Takuya Sawayama and Takenori Obo, Multimodal Sensing for Understanding Color Effect on Students' Task Performance, The International Symposium on Community-centric Systems (CcS 2020), Tokyo, Japan, September 23 - 26, 2020.
- 長谷良夜, 澤山卓也, 澤山智之, 大保武慶, 色彩を用いたICT活用教材による学習効果の評価, 第64回システム制御情報学会研究発表講演会(SCI'20) , 講演論文集, WEB, May 20-22, 2020.
- 長谷良夜, 大保武慶, 教育環境における色彩の与える心理的・生理的反応の評価, 第29回インテリジェントシステムシンポジウム (FAN2019), 講演論文集, 富山, September 17-18, 2019.
- Takenori Obo, Daiki Takaguchi, Daisuke Katagami, Junji Sone, Takahito
Tomoto, Yuta Ogai and Yoshihisa Udagawa, Heartbeat Detection Based on
Pulse Neuron Model for Heart Rate Variability Analysis, In Proceedings
of the 2019 International Joint Conference on Neural Networks
(IJCNN2019), Budapest, Hungary, July 14-19, 2019.
- 高口大輝, 大保武慶, 片上大輔, 曽根順治, 東本崇仁, 大海悠太, 宇田川佳久, 問題解決時における心拍変動解析による色彩が与える心理的効果の検証, 第63回システム制御情報学会研究発表講演会(SCI'9) , 講演論文集, 大阪, May 22-24, 2019.
運動麻痺患者のための遠隔操作ロボットシステム
研究内容
本研究では,身体の不自由な四肢麻痺患者の生活支援と社会参加の支援を目的として,四肢を用いることなく操作が可能な遠隔操作ロボットシステムを開発しています.具体的には,利用者に合わせた操作インタフェースとして,視線計測を使用したインタフェース,圧力センサシートを用いたインタフェースの開発を行いました.
予備実験の一例として,視線計測を用いた操作では,矢印の操作インタフェースと注視点を進行方向とするインタフェースとの比較実験を行いました.また,操作の難しさと操作主体感についてアンケート調査を行い,各インタフェースの課題について議論しました.実験結果より,視線での操作において,注視点を進行方向とするインタフェースのほうが操作感や主体感が高いことが確認できました.しかし,操作するための入力方式が限られているため,スムーズな操作が難しく,今後は,追加実験を通してインタフェースの再検討を行っていく予定です.
キーワード
遠隔操作ロボット,マルチモーダルインタフェース,VR,生活支援
出典
- Roman Rezenko, Duk Shin, Ryoya Hase and Takenori Obo, Mobile Robot with Eye-Gaze Interface, In Proceedings of The 9th International Conference on Smart Media and Applications (SMA 2020), Jeju, South Korea, September 17-19, 2020.
- Takenori Obo, Ryoya Hase, Kohei Kobayashi, Kotaro Sueta, Takeru Nakano and Duk Shin, Cognitive Modeling Based on Perceiving-Acting Cycle in Robotic Avatar System for Disabled Patients, In Proceedings of the 2020 IEEE World Congress on Computational Intelligence (WCCI 2020), Glasgow, UK, July 19 - 24, 2020.
- 長谷良夜, 小林康平, 中埜武, 大保武慶, 辛徳, 四肢麻痺患者のための遠隔コミュニケーションロボットにおけるマルチモーダルインターフェース, ロボティクス・メカトロニクス講演会2020 (ROBOMECH2020), 講演論文集, 2A1-G08, WEB, May 27-30, 2020.
- 長谷良夜, 小林康平, 新井翔平, 末田皐太郎, 中埜武, 大保武慶, 知的移動エージェントのためのマルチモーダルインタフェースの構築, システム・情報部門学術講演会2019 (SSI2019), 講演論文集, pp. 572-575, November 23-25, 2019.
- 長谷良夜, 新井翔平, 末田皐太郎, 大保武慶,遠隔操作ロボットのための視線を入力としたマルチモーダルインタフェースの構築, 第29回インテリジェントシステムシンポジウム (FAN2019), 講演論文集, 富山, September 17-18, 2019.
- 長谷 良夜, Co-G.E.I.チャレンジ2019「四肢麻痺患者支援のための視線を入力とした遠隔操作ロボットの開発」, 2019.