空間の知能化
空間内にさまざまなセンサを適用して人の動作や認知的な特性を計測評価するためのシステム開発について議論しています.
知的センサネットワークを用いた住環境における行動計測
研究内容
本研究では,住環境においてセンサネットワークシステムを構築し,人間の行動推定や行動遷移のパターンモデリングを目的とした研究開発を行っています.具体的には,深層学習を用いた画像認識やレーザスキャナを用いた人間検出に基づく大域的計測システムの開発,家具などに設置したセンサを用いた局所的な人の行動を検出する計測システムの開発などを行っています.また,得られたデータを統合的に処理することによって,住環境という動的環境に対して適応的にサンプリング間隔や計測領域の粒度を制御する知的センサネットワークの構築も目指しています.
キーワード
センサネットワーク,画像処理,人間検出,分散センシング,行動推定,行動遷移
超高感度振動センサを用いた浴槽内における生体情報計測
研究内容
本研究では,超高感度振動センサを適用することで,浴槽の縁に置くだけで,浴槽に伝わる微振動から入浴者の生体情報が検出可能な計測システムを開発しています.本研究で使用する振動検知センサは浴槽の壁面を伝わる人の心拍を検出できるほど高感度である一方,浴室外の他者の歩行,自動車の通過など,外乱によるノイズの影響を非常に受けやすいことが課題となっていました.また,入浴中の生体情報は,水温や入浴時間によって経時的に反応パターンが大きく異なるため,状況に応じた適切な特徴抽出を行わなければ,正確な検出が困難であることも問題でした.
そこで本研究では,上記の問題を解決するため,時空間的なパターンの検出が可能なニューロ・ファジィシステムを構築しました.さらに,耐ノイズ性を考慮し,入力信号に対して出力を心拍のような周期的な発火パターンで表現可能なパルスニューロンモデルを適用した方法を提案しました.
予備実験では,本提案手法の有用性を検討するため,振動検知センサを適用したプロトタイプのセンサモジュールを開発し,実環境における計測実験を行いました.実験の結果,実測の心拍計と同程度の精度で推定ができることが確認でき,さらに,外乱を含むデータに対しても,屋外での自動車の通過や浴室のドアの開閉など,突発的なノイズに対して,提案手法が影響を受けにくいことを示すことができました.
キーワード
心拍検出,生体情報計測,超高感度振動センサ,見守りシステム,ニューロ・ファジィシステム
出典
- 大保武慶, 澤山智之, 澤山卓也, 久保田直行, 超高感度振動センサを用いた浴槽内における生体情報計測システム, システム制御情報学会論文誌, Vol. 30,No. 7, pp. 263-272, 2017.
- Takenori Obo, Toshiyuki Sawayama,
Takuya Sawayama and Naoyuki Kubota, Fuzzy Echo State Network for
Heartbeat Detection using Ultrasensitive Vibration Sensor, In
Proceedings of Joint 17th World Congress of International Fuzzy Systems
Association and 9th International Conference on Soft Computing and
Intelligent Systems (IFSA-SCIS 2017), Otsu, Japan, June 27-30, 2017.
マット型空気圧センサを用いた人の状態推定・生体情報計測
研究内容
本研究では,マットレス型空気圧センサを適用し,座位姿勢や寝姿勢における人間の状態推定や生体情報計測システムの構築を目指した研究開発を行っています.空気圧センサは,センサ端子にポリプロピレンシートで挟み込まれた天然ゴムチューブが接続されており,体動にともなうチューブ内の空気圧の変化を計測することができます.計測される被験者の体動には,重心移動や姿勢変化にともなう動作だけではなく,呼吸や心拍などの生理的反応に基づく動きも含まれています.そのため本研究では,マットレス型空気圧センサをベッドや座布団に埋め込むことで,被験者に対して無意識的に生体情報計測や行動推定が可能なシステム開発を目指しています.
キーワード
状態推定,生体情報計測,空気圧センサ,組込みシステム
出典
- Takenori Obo, Daiki Takaguchi, Daisuke Katagami, Junji Sone, Takahito Tomoto, Yuta Ogai and Yoshihisa Udagawa, Heartbeat Detection Based on Pulse Neuron Model for Heart Rate Variability Analysis, In Proceedings of the 2019 International Joint Conference on Neural Networks (IJCNN2019), Budapest, Hungary, July 14-19, 2019.
距離画像センサを用いた上肢・下肢の動作解析
研究内容
本研究では,非接触で被験者の骨格座標データが取得可能な距離画像センサを適用した上肢運動や下肢運動の計測・分析システムの構築を目指しています.距離画像センサは,実空間上の各骨格座標を推定できる一方で,各関節角度を取得することはできません.関節角度を取得するためには,人の骨格情報に合わせて運動学モデルを構築し,逆運動学を解くことで,各関節角度を推定する必要があります.そこで本研究では,運動学モデルおよび進化計算を応用したヒューリスティックな関節角度の推定手法を提案し,被験者の姿勢によって生じる関節部位のオクルージョンに対しても頑健性を持った計測・分析システムを実現しています.開発したシステムは,住環境などに設置することよって,無意識的かつ非接触で,動作計測や分析が可能なシステム開発に応用できると考えています.
キーワード
動作解析,関節角度推定,運動学モデル,進化計算,多目的最適化
出典
- 新井翔平, 大保武慶,歩行動作解析のための遺伝的アルゴリズムに基づく下肢関節角度推定,第35回ファジィシステムシンポジウム(FSS2019),講演論文集, pp. 242-245, 大阪, August 29-31, 2019.
- Takenori Obo, Chu Kiong Loo, Manjeevan Seera, Takahiro Takeda and Naoyuki Kubota, Arm Motion Analysis using Genetic Algorithm for Rehabilitation and Healthcare, Applied Soft Computing, Vol. 52, pp. 81-92, 2017.
- 大保武慶, 日下純也, 久保田直行, 3次元距離画像センサを用いた進化論的多目的最適化に基づく上肢関節角度推定, システム制御情報学会論文誌, Vol. 29, No. 3, pp. 114-121, 2016.