フーリエと現代

フーリエ男爵は1768年生まれの数学者。フーリエ変換はその名の通り、数学者であったフーリエ男爵のフーリエ解析が元になっている。

18~19世紀は産業革命の時代だ。蒸気機関をより強力で効率的なものとするため、熾烈な技術開発競争がくり広げられ、科学の進歩を刺激した。

「フーリエ男爵」が「熱伝導方程式」の研究のために「フーリエ級数」を考案したのは、まさにこの時期だ。「熱伝導方程式」は「熱力学」とは異なり、蒸気機関への直接貢献は少ないとされるが、熱現象の理解に貢献したことは間違いない。

その後1950年までの150年間は、フーリエ変換が日常直接利用されることはあまりなかった。しかし、1950年にコンピュータが登場し、1970年に高速フーリエ変換(FFT)が登場してデジタル信号処理プロセッサが安価に製造されるようになると、状況は一変した。

図は、1970年から現代までの、高速フーリエ変換(FFT)の利用状況を示したものだ。(クリックすると拡大する)

現在フーリエ変換はデジタルテレビの電場を受信する回路(フロントエンド)、映像、音声の符号化装置、無線LAN、携帯電話、デジタルカメラなど、あらゆる分野で利用されている。初音ミクもフーリエ変換の応用だ。

無線LANでは常時毎秒10億回の演算がフーリエ変換のために行われている。もしかすると、現時点で行われている計算量の半分以上はフーリエ変換かもしれない。

2つの事に注目しておきたい。

(1) フーリエ変換は猛烈な勢いで拡大している

(2) 200年前のフーリエのアイデアが世界を大きく変えた