聴覚心理

人間の聴覚系の特性を用いる。

psychoacousticsの訳語には「聴覚真理」「心理聴覚」がある。

「心理」という言葉が入っているが、実際には抹消系の特性であることがわかっている。すなわち、聴覚心理的に聞こえない信号は、聴覚系から脳に信号が伝わらない。

符号化効率に対する寄与

周波数時間変換符号化に聴覚心理を適用した場合、周波数帯域毎に必要なSNRはだいたい18dB程度である。すなわち1サンプルあたり3bitが必要になる。

これに、冗長削減を組み合わせることで1サンプルあたり1.5bit程度まで符号量を削減できる。この圧縮率では符号化前の音との判別は非常に困難である。

さらに、スペクトル拡張技術、複数チャンネルのベクトル符号化等を組み合わせて、5.1chを64kbps~128kbps程度で良好な音質で圧縮可能である。ただし、この場合には符号化前の音との区別が容易につく。

超音波

20kHz近辺、20kHz以上の音について、「聞こえる」「不要である」「聞こえない」という表現は不正確である。

(1) 30kHzおよびそれ以上の周波数の音は、鼓膜-耳小骨の経路を通過できない

(2) 約半数程度の人は、15kHz以上の音を聞くための有毛細胞が機能しない

(3) したがって、30kHzの音を「その高さの音」として知覚することはないが、30kHzの音を非常に高い振幅で印加すれば、聴覚系の周波数弁別能力が無限に高いわけではないので、他の周波数の有毛細胞が反応する。音としては「雑音」として知覚される。

(4) 一般に、100dB近辺の高い周波数の音を聞き続けると、有毛細胞が損傷する。

(5) 14kHz以上の音を、平均以上の感度で聞くことができる人は、ブラウン管などの電子機器が発生する高い周波数の騒音に不快感を持っていることが多い。

(6) 音として主観的に知覚はされないが、脳波に変化があらわれるという報告がある。興味深い報告ではあるが、通常の人は脳波計を持っていないのであまり関心はないかもしれない。